いろーんな「こうかい」展開中!
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ヨホホホホ~!
という独特の笑い声が響いたのは、それから五分程した頃だった。
「どーも! 皆さんごきげんよう! 呼ばれて参上、ブルックです! 遅れましたが、全知の樹の元に来るなんて、わたし初です。長生きはするものですね!」
背が高い。
第一印象としてはその一言に尽きる。アフロヘアーも高さに拍車をかけている気がする、丸眼鏡にやや逞しげな体格。これで本当に音楽家かと思わず突っ込みそうになる。が、どうしてどうして、その手に持つのはバイオリンだ。
しかも噂からすると、かなり高額な楽器らしく、世界からの貸与を受けている名器だという。
もし噂が本当だとすれば、名器の扱いとしては反則だろう。
なんとなく呆気に取られた面々の前で、うやうやしく頭を下げたブロックはゾロへと目をやるとほっこりとした笑みを浮かべた。
「これはこれは。お初にお目にかかります。あなたがあのロロノア・ゾロさんですね。世間に飛び出して間もないわたしではありますが、すぐに貴方のご高名は耳に入りました。素晴らしい剣士さんだとか、わたしもこう見えてもフェンシングをやっていたことがありましてね。一度お会いしたいと思っていたところでした。あ、ちなみに、その煮物わたしが食べてもいいですか?」
「って、なんじゃそれはっ!」
思わずウソップとサンジが突っ込むと、ヨホホホホとまた笑い声が上がる。
そうしながらも、目を丸くしているナミとビビへと視線を流すと、大いに驚いた顔で両腕を広げてみせた。
「なんと麗しいお嬢さん方! えーパンツ見せてもらっても宜しいでしょうか?」
「見せるかっ!!」
叫んだナミと同時に、サンジの足が速攻でブルックの腹に叩き込まれている。手加減はしているが、見事に決まったそれに、「テッキビシー!」という声と共にブルックが蹲る。
「何レディにセクハラかましてやがるっ!」
怒りに燃えるサンジを、どうどうとチョッパーとウソップがなだめる。
初会合でこれでは先が思いやられるというものだ。
だが、一連の出来事をルフィとエースは腹を抱えてみているし、フランキーもロビンも苦笑で済ませている。どうやらブルック名誉教授はいつもこんな感じらしい。
「まあ、とにかく」
それでもブルックの復活は早く、あっさりとサンジの蹴りもなんのそので立ち上がり、彼は再度ゾロを見つめた。
「世の中に出てきて初めての友人達との逢瀬が誕生日を祝うという、この素晴らしい繋がりに感謝いたします。ルフィさんと知り合いになれて、ほんとうに嬉しい。そして、貴方という人と出会えたことも。ゾロさん、お誕生日おめでとうございます」
初めて会った人に、真摯な祝いをもらう。
ゾロは本気で不思議な気持ちを受けつつも、礼には礼を、と真摯に頭を下げた。
「ありがとう」
「ヨホホホ、貴方のこれからに幸あらんことを願って、一曲いきましょう!」
颯爽とバイオリンを構える姿は、とても絵になっている。
おおお、と喜びの声を上げたのはルフィ達だけではなかった。遠巻きにこちらを観察している生徒達からも、どよめきが上がる。
それだけこの教授の音楽に対する希少性は凄いのだ。…なにせ、行方不明だったので。
ブルックがバイオリンを構え、振り回すように持っていた弓をそっと楽器に添わせると、想像もしない豊かな音が流れ出した。
そんなに大音量というわけでもないのに、その音はどこまでも響き渡り、時折聞こえる葉ずれの音すら巻き込んで、耳に心地良く入ってくる。
曲はとてもありきたりな、BDソングだった。
だが編曲が随分となされているようで、繰り返すメロディは華やかに和音が重なり、それだけで身体が弾んでくる。
伊達に名誉音楽教授などになっているわけではない。
時にメロディに合わせて歌詞を口ずさみ、ルフィ達などは身体をゆすって踊りたそうにしている。
不意に、ゾロの耳に掠れたような声が響いた。
いつの間にか隣に座っていたサンジが、小さく小さく唄っている。
何度も何度も、誰にも聞こえないようになのだろうか、微かに揺れる唇で、吐息をつくように囁いている。
~Happy Birthday to you
Happy Birthday to you
何故だかその声がブルックの奏でる音に混じり、とてもはっきりと聞き取れる。
掠れさせた声は、記憶にある夜更けの囁きにも似て…
ゾロはそっと目を閉じた。
それは一見すると、ブルックが奏でる音を、無心に聞いているように見えただろう。
けれど、ゾロの耳はもう一つの音である声を、求めるように聞いていた。
Happy Birthday dear ……
Happy Birthday to you~
繰り返されるそれを、しっかりとゾロは受け止めた。
目を開けると、サンジがこちらを見ている。どこかいたずらっぽく、人が見れば少しからかい気味な笑みにさえ見えそうな表情で、それでもサンジはゾロを見ていた。
だからゾロは小さく口元に笑みをはいて返事にする。
それでいい。
それだけで充分、サンジには伝わる。出会った瞬間から、それを二人は知っている。
出会って重ねた月日は短いかもしれない。だが、出会う瞬間だけを長く…とにかく長く待ち続けた過去があるからこそ、分かることもあるのだ。
一緒にいられる今の時間が、どんな形であれ愛おしい。
ましてや、同じように出会った瞬間から、親しく付き合える仲間のような者達に囲まれて過ごせる時間となれば、値千金。
ブルックの奏でる音色が終わると同時に、ゾロは飲み物を取る素振りで、そっとサンジの手に指を重ねた。
少し冷えた指先が、ちょっとだけゾロの温もりを奪っていく。
サンジは笑ってそれから拍手をするために、手をすり抜けさせた。
「すげーな、ブルック教授! ただのバースデーソングには思えなかった!」
盛大な拍手があちこちで湧き上がる。それに一々大仰に頭を下げ、ブルックはヨホホホホホと笑う。
「それにしても、全知の樹の下は気持ちいいですねぇ。この子もとても気持ち良く鳴ってくれました。良い日を私ももらいました」
愛おしそうに楽器を見つめ、ブルックはゾロを見た。
「貴方の誕生日のおかげですね、ありがとう」
「…おれより、ここにいる皆が許可取ってきたんだ、礼ならこいつらにだろう。だが、貴重なものを聞かせてもらった。ありがとう。礼を言う」
再度きちんと頭を下げたゾロを、ブルックはとても嬉しそうに見つめ、うんうんと頷く。
そうして、他の皆に勧められるまま緋毛氈に腰を下ろしたブルックは、今度はサンジの弁当に目を飛び出させる程に驚いて、調子にのってそれから二曲も続けてバイオリンを鳴り響かせたのだった。
という独特の笑い声が響いたのは、それから五分程した頃だった。
「どーも! 皆さんごきげんよう! 呼ばれて参上、ブルックです! 遅れましたが、全知の樹の元に来るなんて、わたし初です。長生きはするものですね!」
背が高い。
第一印象としてはその一言に尽きる。アフロヘアーも高さに拍車をかけている気がする、丸眼鏡にやや逞しげな体格。これで本当に音楽家かと思わず突っ込みそうになる。が、どうしてどうして、その手に持つのはバイオリンだ。
しかも噂からすると、かなり高額な楽器らしく、世界からの貸与を受けている名器だという。
もし噂が本当だとすれば、名器の扱いとしては反則だろう。
なんとなく呆気に取られた面々の前で、うやうやしく頭を下げたブロックはゾロへと目をやるとほっこりとした笑みを浮かべた。
「これはこれは。お初にお目にかかります。あなたがあのロロノア・ゾロさんですね。世間に飛び出して間もないわたしではありますが、すぐに貴方のご高名は耳に入りました。素晴らしい剣士さんだとか、わたしもこう見えてもフェンシングをやっていたことがありましてね。一度お会いしたいと思っていたところでした。あ、ちなみに、その煮物わたしが食べてもいいですか?」
「って、なんじゃそれはっ!」
思わずウソップとサンジが突っ込むと、ヨホホホホとまた笑い声が上がる。
そうしながらも、目を丸くしているナミとビビへと視線を流すと、大いに驚いた顔で両腕を広げてみせた。
「なんと麗しいお嬢さん方! えーパンツ見せてもらっても宜しいでしょうか?」
「見せるかっ!!」
叫んだナミと同時に、サンジの足が速攻でブルックの腹に叩き込まれている。手加減はしているが、見事に決まったそれに、「テッキビシー!」という声と共にブルックが蹲る。
「何レディにセクハラかましてやがるっ!」
怒りに燃えるサンジを、どうどうとチョッパーとウソップがなだめる。
初会合でこれでは先が思いやられるというものだ。
だが、一連の出来事をルフィとエースは腹を抱えてみているし、フランキーもロビンも苦笑で済ませている。どうやらブルック名誉教授はいつもこんな感じらしい。
「まあ、とにかく」
それでもブルックの復活は早く、あっさりとサンジの蹴りもなんのそので立ち上がり、彼は再度ゾロを見つめた。
「世の中に出てきて初めての友人達との逢瀬が誕生日を祝うという、この素晴らしい繋がりに感謝いたします。ルフィさんと知り合いになれて、ほんとうに嬉しい。そして、貴方という人と出会えたことも。ゾロさん、お誕生日おめでとうございます」
初めて会った人に、真摯な祝いをもらう。
ゾロは本気で不思議な気持ちを受けつつも、礼には礼を、と真摯に頭を下げた。
「ありがとう」
「ヨホホホ、貴方のこれからに幸あらんことを願って、一曲いきましょう!」
颯爽とバイオリンを構える姿は、とても絵になっている。
おおお、と喜びの声を上げたのはルフィ達だけではなかった。遠巻きにこちらを観察している生徒達からも、どよめきが上がる。
それだけこの教授の音楽に対する希少性は凄いのだ。…なにせ、行方不明だったので。
ブルックがバイオリンを構え、振り回すように持っていた弓をそっと楽器に添わせると、想像もしない豊かな音が流れ出した。
そんなに大音量というわけでもないのに、その音はどこまでも響き渡り、時折聞こえる葉ずれの音すら巻き込んで、耳に心地良く入ってくる。
曲はとてもありきたりな、BDソングだった。
だが編曲が随分となされているようで、繰り返すメロディは華やかに和音が重なり、それだけで身体が弾んでくる。
伊達に名誉音楽教授などになっているわけではない。
時にメロディに合わせて歌詞を口ずさみ、ルフィ達などは身体をゆすって踊りたそうにしている。
不意に、ゾロの耳に掠れたような声が響いた。
いつの間にか隣に座っていたサンジが、小さく小さく唄っている。
何度も何度も、誰にも聞こえないようになのだろうか、微かに揺れる唇で、吐息をつくように囁いている。
~Happy Birthday to you
Happy Birthday to you
何故だかその声がブルックの奏でる音に混じり、とてもはっきりと聞き取れる。
掠れさせた声は、記憶にある夜更けの囁きにも似て…
ゾロはそっと目を閉じた。
それは一見すると、ブルックが奏でる音を、無心に聞いているように見えただろう。
けれど、ゾロの耳はもう一つの音である声を、求めるように聞いていた。
Happy Birthday dear ……
Happy Birthday to you~
繰り返されるそれを、しっかりとゾロは受け止めた。
目を開けると、サンジがこちらを見ている。どこかいたずらっぽく、人が見れば少しからかい気味な笑みにさえ見えそうな表情で、それでもサンジはゾロを見ていた。
だからゾロは小さく口元に笑みをはいて返事にする。
それでいい。
それだけで充分、サンジには伝わる。出会った瞬間から、それを二人は知っている。
出会って重ねた月日は短いかもしれない。だが、出会う瞬間だけを長く…とにかく長く待ち続けた過去があるからこそ、分かることもあるのだ。
一緒にいられる今の時間が、どんな形であれ愛おしい。
ましてや、同じように出会った瞬間から、親しく付き合える仲間のような者達に囲まれて過ごせる時間となれば、値千金。
ブルックの奏でる音色が終わると同時に、ゾロは飲み物を取る素振りで、そっとサンジの手に指を重ねた。
少し冷えた指先が、ちょっとだけゾロの温もりを奪っていく。
サンジは笑ってそれから拍手をするために、手をすり抜けさせた。
「すげーな、ブルック教授! ただのバースデーソングには思えなかった!」
盛大な拍手があちこちで湧き上がる。それに一々大仰に頭を下げ、ブルックはヨホホホホホと笑う。
「それにしても、全知の樹の下は気持ちいいですねぇ。この子もとても気持ち良く鳴ってくれました。良い日を私ももらいました」
愛おしそうに楽器を見つめ、ブルックはゾロを見た。
「貴方の誕生日のおかげですね、ありがとう」
「…おれより、ここにいる皆が許可取ってきたんだ、礼ならこいつらにだろう。だが、貴重なものを聞かせてもらった。ありがとう。礼を言う」
再度きちんと頭を下げたゾロを、ブルックはとても嬉しそうに見つめ、うんうんと頷く。
そうして、他の皆に勧められるまま緋毛氈に腰を下ろしたブルックは、今度はサンジの弁当に目を飛び出させる程に驚いて、調子にのってそれから二曲も続けてバイオリンを鳴り響かせたのだった。
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活字がなくては生きていけず。
日本文化にひたりまくり。
年期の入った刀好き。
どおりで、落ちた先は緑髪の剣士よ…(笑)
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年期の入った刀好き。
どおりで、落ちた先は緑髪の剣士よ…(笑)
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