いろーんな「こうかい」展開中!
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つまり、こういう理由だ。
今この場にはいない緑の髪の男は、片目を潰すくらいのことをしでかしたということだ。
それどころか、片目を潰すくらいですんで良かった、と安堵されたくらい酷い出来事は既に全国版のニュースにすらなっているらしい。
病院の待合室の椅子に座り込んで、もうどれくらいたったのか、彼自身にも分からない。
両手に顔を落とし込み、見事な金色の髪を流し下ろしたまま、彼はじっと考えている。
ほんの数時間前、いつものように気軽に話をして、あいつに買い物に行かせた。
その時の会話ばかりが脳裏を過ぎる。
「なんでこんなに材料が足りなくなってるんだよ!おれがこの間買い足したばかりだろうが!」
「おれが使うわけねぇだろ! どうせナミ達が使ったに決まってる」
「ん…んナッミさんがこんなむさ苦しい家に来ただとー!!何故おれを呼ばねぇ!!隣にいるってーのにっ!!」
「……お前は店の手伝いしてる時間だったんだよ…」
どこかバツが悪そうにあらぬ方を憮然と見る彼は、くたびれたワイシャツ姿だ。
最近仕事が忙しいらしく、家に戻って来る時間もあまりにもまちまちで、まともに顔を合わせていなかったことを思い出した。
ゾロは剣道の腕を請われて警察官になっている。方向音痴に勤まるのかと、散々笑いものにしたのは何年前だったか。
それでも剣道だけでなく武道の腕は良いからか、そつなく仕事はこなしているようで、年々会える時間が減ってきていた。
それが無性に寂しくて、いつも明かりのつかない部屋を覗き見ては、小さく苦笑して煙草を吸うという毎日を過ごしていたのは自分だ。
久々に会えたからか、自分でも分かるくらいにテンションが上がっているのが分かって、舌打ちした。
それをどう受け取ったのか、彼はムッとした顔で吐き捨てるように「次はどんな時でも呼んでやるよ。それでいいだろ」と告げて大きく溜息をついた。
思い出せば胸が痛い。
どうしてこんな風になってしまうのか。
生まれた時から近くにいて、ずっと保育園から高校卒業するまで一緒に育った。
いつもいつも喧嘩ばかりで、お互いの両親を呆れさせまくったが、それとは真逆に何故か馬が合って、なんだかんだと二人で一緒に行動した。
あいつが隣にいれば、なんでも出来る気がした。
高校を卒業する間際、進路が初めて別れることに、ふと気付いた時は焦った。
これからあいつが隣にいなくなる。それは別に珍しいことではないはずなのに、恐ろしく自分を恐慌に陥れた。
女性大好きで、ずっと可愛い子を追いかけまくってきていたはずなのに、その誰よりも彼が傍にいなくなることに衝撃を受けている自分に愕然とした。
きっとこれは、今まで仲の良かったヤツがいなくなるからだ。
そう思って、自分は専門学校、彼は警察学校とに別れて以降、彼以外の友人や女性と遊びまくった。
最初は寮に入れられていた彼が戻って来ても、自分の方が家にいなかったくらいだ。
すれ違って数年。
修行の場として選んだ料理店に就職も決まった年、久しぶりに自分の部屋に戻ってみたら、彼がいた。
煙草を吸う為に、ガラリと窓を開けたら、丁度同じタイミングで窓を開けた彼と目があったのだ。
落ちた。
いや、彼が持っていたらしい紙の束は確かに落ちたが、本当に落ちたのはそれではなく。
自分はその時に自覚したのだ。
自分が、彼に、特別な感情を持っていて、それが無くならないということを。
彼は久しぶりに見る自分を暫く凝視し、ニッカリと笑った。
「久しぶりだな。巻き眉毛。豪勢に遊んでるらしいじゃねぇか」
二回りも体格も何もかもが増した男は、恐ろしい程に精悍になっていた。
「……お前こそ、相変わらずのマリモ頭はかわってねぇじゃねぇか」
激しく胸を打つ鼓動が、相手に聞こえないかと、とにかく心配だったことだけが今は記憶されている。
その再会からこっち、また元に近く二人でつるむようになった。
お互いの休みをすり合わせて遊びに行ったり、映画にも行った。昔の仲間を集めて、ピクニックや遊園地や旅行にだって行った。
時間がなかなか合わなくて、ヤキモキしたり時には盛大に喧嘩したり…元通りに戻ったようにきっと皆は思っていただろう。
とんだ茶番だ。
自分はいつバレるか、もしバレたらお終いだ。といつも常に気を張り詰めていたというのに。
そして、多分そんな自分を彼も気付いていた。
けれど二人でいる時間を、一緒にいられる時間を捨てることはもっとできなくて。
最近は、どうすればいいのかと、どうすればこの気持ちを誤魔化していけるのかと、そんなことばかりに気を使っていたような気がする。
だから、今日。
たまたま、本当にたまたま、ちょっと食事できるくらいの時間が合ったから。
自分はただ、疲れているだろうあいつに、美味い飯を食わせたいと…、そう思って…ただ、そうしたくて…。
「…っ」
買いに行けなんて、言わなければ良かった。
材料なら、自分の家の厨房から取ってくればよかったのだ。どうせたんまりあるのに。塩がないとか、砂糖もないとか。調味料ほとんど切れかけてるとか。そんなのいつものマリモの食卓だったのに。
病院の手術室の扉は閉まったまま、もう何時間も開こうとはしていない。
小さな女の子を助けようとしたらしい。子犬をつれたその子めがけて、ワゴン車が突っ込んできたのだという。
咄嗟に女の子と子犬を庇ってワゴン車に撥ねられ、丁度通りがかった別の車にも跳ねられたらしい。
普段から鍛えに鍛えている男だったから、なんとか致命傷になるような無様な真似はしなかったのだろうが、いくら受け身を取っても車に勝てる現代人はいない。
しかも、女の子を庇っていたせいで、最初の衝突がかなり無茶をしていたらしい。
さらに運がなかったのは、除けようとしたその後続の車が近くの店に突っ込み、ガラスが飛散したことだ。そこに突っ込む形になったのだという。
たった数時間前まで、本当にいつものように喧嘩して、一緒にいたのに。
「ゾロっ!」
嗚咽のような声が、小さく掌の中でくぐもって消える。
もう何も望まない、元から望もうとも思ってはいなかったけれど、どうか、もう何も望まないから。
あいつを…。
それだけを、ただ繰り返すしか、彼にはできなかった。
ブザーが鳴って、扉が開いた。
大きくよろけながら、家族が飛び出して行くのが見える。
けれど彼は動けずに、呆然と出てこないストレッチャーを待つしかできない。
「サンジくん! 来て!」
遠くから、くいなちゃんの鋭い声が聞こえる。
だからサンジはフラリとそちらへ足を進めた。まるで雲の上を歩いているような、そんな心元ない足取りだった。
手術あけのゾロはそのまま手術室から繋がっている救急用の病室に一晩入れられるらしい。
付き添いはいらないらしいが、面会時間は明日以降ということで、ここで合わなかったらもう明日まで顔も見られないらしい。
くいなに腕を引っ張られ、薬臭いというか消毒薬の匂いのする部屋に入ると、沢山の機械に囲まれたベッドがあった。
まだ麻酔が効いてるはずだ、と言われたが、酸素マスクをしたゾロの顔面は半分以上が包帯に覆われている。
よろよろと傍に寄れば、くいなとゾロの母親が涙ながらに自分を支えてくれた。
「もう、この子ったらこんなにサンジくんに心配かけて。ほら、見て。大丈夫なのよ。どんだけ頑丈なのかって感じで、まあ胸を大きく切ったけど、これももう大丈夫らしいわ。顔は…まあ、男なんだからいいでしょ。…でも骨とかは少ししか折れてないし、打ち身は酷いかもだけど、致命傷にはならなかったらしいの。本当に…本当に頑丈で…頑丈なんだから…」
囁くようにそう言うくいなと彼の母親を見つめ、サンジはもう一度ゾロを見た。
「……っっ」
声にならない。
生きている。
胸も動いているし、繋いである各種の機械が定期的に打つ心音を線にして見せてくれている。
ゾロ。
ゾロ。
ゾロ。
もう何も望まないから。
だから…生きていてくれれば…そうすれば…。
まだ手術あけで、このまま寝ているはずの男の手が、微かに動いた。
動いたように見えただけか、と思ったら、血相を変えた看護婦が飛び込んできた。
見れば、やっぱり手が動いている。
咄嗟にその手を押さえれば、力のこもらない動きで、指が彼の手をなぞった。
大丈夫だとでも言うように。
ぎゅっ、と握り締めれば、握り返してくれる。
幼なじみの男が、握った手を。
不器用に、けれど、確かに安心させようとしているかのように。
「バーカ」
囁くように言えば、微かにゾロが笑ったような、そんな気がした。
終了
☆ ☆ ☆ ☆
ツイッターお題で30分以内で2RTだったので書きました。
お題からはちょっと離れた気がしないでもないですが。まあ、こんな感じで。
さらっと書き殴ったので、後日誤字脱字等を調べますぅ…すんません一発書きのとんでもない代物でした。
今この場にはいない緑の髪の男は、片目を潰すくらいのことをしでかしたということだ。
それどころか、片目を潰すくらいですんで良かった、と安堵されたくらい酷い出来事は既に全国版のニュースにすらなっているらしい。
病院の待合室の椅子に座り込んで、もうどれくらいたったのか、彼自身にも分からない。
両手に顔を落とし込み、見事な金色の髪を流し下ろしたまま、彼はじっと考えている。
ほんの数時間前、いつものように気軽に話をして、あいつに買い物に行かせた。
その時の会話ばかりが脳裏を過ぎる。
「なんでこんなに材料が足りなくなってるんだよ!おれがこの間買い足したばかりだろうが!」
「おれが使うわけねぇだろ! どうせナミ達が使ったに決まってる」
「ん…んナッミさんがこんなむさ苦しい家に来ただとー!!何故おれを呼ばねぇ!!隣にいるってーのにっ!!」
「……お前は店の手伝いしてる時間だったんだよ…」
どこかバツが悪そうにあらぬ方を憮然と見る彼は、くたびれたワイシャツ姿だ。
最近仕事が忙しいらしく、家に戻って来る時間もあまりにもまちまちで、まともに顔を合わせていなかったことを思い出した。
ゾロは剣道の腕を請われて警察官になっている。方向音痴に勤まるのかと、散々笑いものにしたのは何年前だったか。
それでも剣道だけでなく武道の腕は良いからか、そつなく仕事はこなしているようで、年々会える時間が減ってきていた。
それが無性に寂しくて、いつも明かりのつかない部屋を覗き見ては、小さく苦笑して煙草を吸うという毎日を過ごしていたのは自分だ。
久々に会えたからか、自分でも分かるくらいにテンションが上がっているのが分かって、舌打ちした。
それをどう受け取ったのか、彼はムッとした顔で吐き捨てるように「次はどんな時でも呼んでやるよ。それでいいだろ」と告げて大きく溜息をついた。
思い出せば胸が痛い。
どうしてこんな風になってしまうのか。
生まれた時から近くにいて、ずっと保育園から高校卒業するまで一緒に育った。
いつもいつも喧嘩ばかりで、お互いの両親を呆れさせまくったが、それとは真逆に何故か馬が合って、なんだかんだと二人で一緒に行動した。
あいつが隣にいれば、なんでも出来る気がした。
高校を卒業する間際、進路が初めて別れることに、ふと気付いた時は焦った。
これからあいつが隣にいなくなる。それは別に珍しいことではないはずなのに、恐ろしく自分を恐慌に陥れた。
女性大好きで、ずっと可愛い子を追いかけまくってきていたはずなのに、その誰よりも彼が傍にいなくなることに衝撃を受けている自分に愕然とした。
きっとこれは、今まで仲の良かったヤツがいなくなるからだ。
そう思って、自分は専門学校、彼は警察学校とに別れて以降、彼以外の友人や女性と遊びまくった。
最初は寮に入れられていた彼が戻って来ても、自分の方が家にいなかったくらいだ。
すれ違って数年。
修行の場として選んだ料理店に就職も決まった年、久しぶりに自分の部屋に戻ってみたら、彼がいた。
煙草を吸う為に、ガラリと窓を開けたら、丁度同じタイミングで窓を開けた彼と目があったのだ。
落ちた。
いや、彼が持っていたらしい紙の束は確かに落ちたが、本当に落ちたのはそれではなく。
自分はその時に自覚したのだ。
自分が、彼に、特別な感情を持っていて、それが無くならないということを。
彼は久しぶりに見る自分を暫く凝視し、ニッカリと笑った。
「久しぶりだな。巻き眉毛。豪勢に遊んでるらしいじゃねぇか」
二回りも体格も何もかもが増した男は、恐ろしい程に精悍になっていた。
「……お前こそ、相変わらずのマリモ頭はかわってねぇじゃねぇか」
激しく胸を打つ鼓動が、相手に聞こえないかと、とにかく心配だったことだけが今は記憶されている。
その再会からこっち、また元に近く二人でつるむようになった。
お互いの休みをすり合わせて遊びに行ったり、映画にも行った。昔の仲間を集めて、ピクニックや遊園地や旅行にだって行った。
時間がなかなか合わなくて、ヤキモキしたり時には盛大に喧嘩したり…元通りに戻ったようにきっと皆は思っていただろう。
とんだ茶番だ。
自分はいつバレるか、もしバレたらお終いだ。といつも常に気を張り詰めていたというのに。
そして、多分そんな自分を彼も気付いていた。
けれど二人でいる時間を、一緒にいられる時間を捨てることはもっとできなくて。
最近は、どうすればいいのかと、どうすればこの気持ちを誤魔化していけるのかと、そんなことばかりに気を使っていたような気がする。
だから、今日。
たまたま、本当にたまたま、ちょっと食事できるくらいの時間が合ったから。
自分はただ、疲れているだろうあいつに、美味い飯を食わせたいと…、そう思って…ただ、そうしたくて…。
「…っ」
買いに行けなんて、言わなければ良かった。
材料なら、自分の家の厨房から取ってくればよかったのだ。どうせたんまりあるのに。塩がないとか、砂糖もないとか。調味料ほとんど切れかけてるとか。そんなのいつものマリモの食卓だったのに。
病院の手術室の扉は閉まったまま、もう何時間も開こうとはしていない。
小さな女の子を助けようとしたらしい。子犬をつれたその子めがけて、ワゴン車が突っ込んできたのだという。
咄嗟に女の子と子犬を庇ってワゴン車に撥ねられ、丁度通りがかった別の車にも跳ねられたらしい。
普段から鍛えに鍛えている男だったから、なんとか致命傷になるような無様な真似はしなかったのだろうが、いくら受け身を取っても車に勝てる現代人はいない。
しかも、女の子を庇っていたせいで、最初の衝突がかなり無茶をしていたらしい。
さらに運がなかったのは、除けようとしたその後続の車が近くの店に突っ込み、ガラスが飛散したことだ。そこに突っ込む形になったのだという。
たった数時間前まで、本当にいつものように喧嘩して、一緒にいたのに。
「ゾロっ!」
嗚咽のような声が、小さく掌の中でくぐもって消える。
もう何も望まない、元から望もうとも思ってはいなかったけれど、どうか、もう何も望まないから。
あいつを…。
それだけを、ただ繰り返すしか、彼にはできなかった。
ブザーが鳴って、扉が開いた。
大きくよろけながら、家族が飛び出して行くのが見える。
けれど彼は動けずに、呆然と出てこないストレッチャーを待つしかできない。
「サンジくん! 来て!」
遠くから、くいなちゃんの鋭い声が聞こえる。
だからサンジはフラリとそちらへ足を進めた。まるで雲の上を歩いているような、そんな心元ない足取りだった。
手術あけのゾロはそのまま手術室から繋がっている救急用の病室に一晩入れられるらしい。
付き添いはいらないらしいが、面会時間は明日以降ということで、ここで合わなかったらもう明日まで顔も見られないらしい。
くいなに腕を引っ張られ、薬臭いというか消毒薬の匂いのする部屋に入ると、沢山の機械に囲まれたベッドがあった。
まだ麻酔が効いてるはずだ、と言われたが、酸素マスクをしたゾロの顔面は半分以上が包帯に覆われている。
よろよろと傍に寄れば、くいなとゾロの母親が涙ながらに自分を支えてくれた。
「もう、この子ったらこんなにサンジくんに心配かけて。ほら、見て。大丈夫なのよ。どんだけ頑丈なのかって感じで、まあ胸を大きく切ったけど、これももう大丈夫らしいわ。顔は…まあ、男なんだからいいでしょ。…でも骨とかは少ししか折れてないし、打ち身は酷いかもだけど、致命傷にはならなかったらしいの。本当に…本当に頑丈で…頑丈なんだから…」
囁くようにそう言うくいなと彼の母親を見つめ、サンジはもう一度ゾロを見た。
「……っっ」
声にならない。
生きている。
胸も動いているし、繋いである各種の機械が定期的に打つ心音を線にして見せてくれている。
ゾロ。
ゾロ。
ゾロ。
もう何も望まないから。
だから…生きていてくれれば…そうすれば…。
まだ手術あけで、このまま寝ているはずの男の手が、微かに動いた。
動いたように見えただけか、と思ったら、血相を変えた看護婦が飛び込んできた。
見れば、やっぱり手が動いている。
咄嗟にその手を押さえれば、力のこもらない動きで、指が彼の手をなぞった。
大丈夫だとでも言うように。
ぎゅっ、と握り締めれば、握り返してくれる。
幼なじみの男が、握った手を。
不器用に、けれど、確かに安心させようとしているかのように。
「バーカ」
囁くように言えば、微かにゾロが笑ったような、そんな気がした。
終了
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ツイッターお題で30分以内で2RTだったので書きました。
お題からはちょっと離れた気がしないでもないですが。まあ、こんな感じで。
さらっと書き殴ったので、後日誤字脱字等を調べますぅ…すんません一発書きのとんでもない代物でした。
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